強制執行(差押え)自分で出来る‼その方法を解説‼
強制執行(差押え)自分で出来る‼その方法を解説‼
夫と離婚をして養育費の支払いの約束をしたのに・・・・全く支払ってもらえなかったり、最初のうちだけ払ってくれていたけど、気が付いたら養育費を払わなくなった・・・。という方少なくありません。
離婚をするときに調停や裁判を経て、決定したはずの・・・支払いを約束した公正証書や、支払を命ずる裁判所の判決があるのに、金銭の支払い義務を果たしてくれない債務者は存在します。
相手がどうしても払ってくれない時にその支払いの回収方法として効果的な一つの方法として強制執行があるのですね。
強制執行というと弁護士等の専門家に依頼する難しい手続きあると考えるかもしれませんが、弁護士に依頼するには費用もそれなりに高額になってくるため、もしも、自分で行える手続きなのであれば自分でやりたいと考えたことがある方も多いのではないでしょうか?
強制執行は書類の準備ができれば、十分に自分自身で出来る手続きとなっているので、今回は強制執行の流れについて解説していきます。
強制執行とは
そもそも、強制執行とはなんなのでしょうか?
強制執行とは判決等の内容に従わない債務者がいる場合に、裁判所の命令等に基づいて、判決等の内容を実現させ支払いを受けるための手続のことで、長期間支払いを滞納している債務者の財産を差し押さえるという事です。
支払いに関して、調停や裁判などで決めた調書や判決書がなくただの口約束をしているだけのような場合には強制執行はできませんので、先に強制執行のできる債務名義(調書・判決書・公正証書・支払督促など)を取得する事が必要となってきます。
何となく難しい文面に見えてしまいますが、これを嚙み砕いて養育費や慰謝料の事で言うならば
調停や裁判で養育費や慰謝料を支払う決定や判決が出ているのに、全く支払う事もなく、さらにはその意思もないような場合に、強制的に支払わせるための手続きという事になるのです。
強制執行の対象となる財産
強制執行では債務者の財産を差し押さえる事になりますが、差し押さえの対象として次のようなものが挙げられます。
- 動産 (動産執行)
- 不動産 (不動産執行)
- 債権 (債権執行)
動産執行
債務者が所有する車両や美術品・宝飾品、所有する現金(66万円を超える現金に限る)などを差し押さえます。
※現金が66万円とされているのは、いくら養育費や慰謝料を支払わないといっても、すべての財産を差し押さええて奪ってしまえば、その人物が一切の生活が出来なくなってしまう可能性があるという観点から、生活費までは差し押さえしないようにされているのですね。
養育費や慰謝料を支払ってもらっていない側としては、そんな金額の生活費があるのであれば1万円でも支払ってもらいたい!と思いますが・・・・これも法的に決まっている事なので致し方ないですね。
不動産執行
債務者が保有する土地や建物等の不動産を差押え、売却(競売)して得られた金銭から債権を回収に充てます。
これも、実際に売却した際の金額を想定したうえで行動しなければなりませんね。
債権執行
債務者の債権を差し押さえます。給料、売掛金、報酬、預貯金など債権の範囲はとても広く、それらを差し押さえます。
※会社から支払われるお給料や、支払われる予定にある報酬、隠し持っている預貯金等々
※但し、差し押さえるにあたっては、自分自身で、何の債権を強制執行するかを自分で調査しなければならないので、そこはある程度準備しなければならないし探偵事務所等の調査の専門家に頼る必要があります。
強制執行の流れ
先に述べたように、強制執行の対象には『動産』『不動産』『債権』とありますが、今回は債権執行する際の流れについて解説していきます。
債権(財産)について調べる
相手の財産を差し押さえる事になりますので、まず差し押さえの対象(債権)について調べる必要があります。債権が無ければ強制執行はできないという事になります。
隠している預貯金、利用している口座、現在の勤務先、副業をしているのではないか?
等々の事柄について調べるのはもちろん、車を保有しているの?等々あらゆる可能性があるのです。
給料・報酬債権や売掛金
お給料や、報酬を支払う元について調査し、その債権がどこからでているか調べなければいけません。ようするに債務者の勤務先、もしも相手が個人事業主などの場合にはその取引先を調査する必要があります。法人名と住所を調べましょう。
もし可能であれば、法人名などを調べる時に今離婚を考えている人であれば相手の基礎年金番号を事前に記録しておくと、いざというときにどこで働いているのか?を探偵事務所で簡単に調べることが出来るの今のうちに準備しておいてください。
預貯金
預貯金に対する強制執行の場合、普通預金だけでなく定期預金や当座預金などいろんな預貯金から差押えをすることができます。債務者の口座がどこにあるのか
・銀行名
・支店名
がわからないと強制執行ができません。
しっかりと銀行名と支店を把握しておく必要はあります。最近では金融機関において特別な事情(勤務先等が所在している)がない限りは、自宅近くの支店でしか口座を開設できないような金融機関が多いので、参考にしていただけたらと思います。
大手金融機関の他、ゆうちょ銀行の場合で支店が判らなくても口座差し押さえをする方法があるのです。
ゆうちょ銀行の口座は多くの方が持っていることと、普通の銀行であれば支店があちこちにありますが、ゆうちょ銀行に関しては地方ごとに大体ひとつずつしか貯金事務センターがないのです。つまり、相手の住所地を管轄する貯金事務センターに強制執行をかけると出てくるという事があるのです。
その他にも、ネット銀行であれば支店が判らなくても、金融機関の大元と直接やり取りすることで該当する支店を金融機関側が洗い出して差し押さえに協力してもらえるというシステムもあるので友好的に利用していきたいですね。
必要書類を用意する
強制執行は書類提出による申し立てですので様々な書類が必要となります。裁判所のサイトでダウンロードできるものや、自身で用意するものなどありますので各書類について説明します。
基本的には裁判所のWEBサイトからダウンロードできることが多いので、ご自身のお住まいを管轄する裁判所のWEBサイトをチェックしてみてください。
必要書類
・法人や金融機関等の資格証明書(登記事項証明書又は代表事項証明書)
・執行力のある債務名義の正本
・債務名義の送達証明書
・申立書(債権差押命令)
・当事者目緑
・請求債権目録
・差押債権目録
・自分の戸籍謄本(債務名義に記載の氏名から変更有の時)
・自分の住民票(債務名義に記載の住所から変更有の時)
※第三債務者に対する陳述催告の申立書
事案により裁判所から送付する場合がある
法人や金融機関等の資格証明書(登記事項証明書又は代表事項証明書)
養育費や慰謝料を回収するためのここまでしっかり準備をしてきたはずです。
銀行口座を差し押さえるのか?それともお給料や相手に支払われるはずの報酬を差し押さえるのか?何に対して強制執行するのか決まったらいよいよこの次は、その強制執行先の資格証明書を取得するのです。
資格証明書は法務局で直接取ることもできますが、法務局のWEBサイトから申請し郵送で取得することもできます。
郵送のメリットとしては、郵送には数日要しますが、ネット申請を利用すれば法務局に出向く手間が省けるので、忙しい方でも家庭の事や仕事を休んで出向かなくていい等のメリットがあるのです。
もちろん直接窓口に行けばすぐに申請がなされるので、届くまで待たなくていいというメリットもありますが、どちらにするかはご自身次第という事ですね。
ここで注意しなければならないのが、
資格証明書は差押え命令申し立てより1か月以内に発行されたもの
となっているのですね。
となると、資格証明書が発行されたのならばある程度期間がない中で一気に動かなければならなくなるので、出来る事なら養育費や慰謝料をしっかりと回収できるように、ある程度ほかの書類準備の目途がたってから最終的に資格証明書を発行してもらう手筈がいいのかもしれないですね。
執行力のある債務名義の正本
債務名義とは強制執行を申し立てる資格を示す文書のことです。 債務名義には、確定判決をはじめとして11種類あり、強制執行の申立てには、謄本ではなく債務名義の“正本”が必要となります。
調停調書や判決文や公正証書など、下記に記した執行力のない債務名義の場合は裁判所や公正人役場に執行文の付与を申し立て、正本に執行文を付与してもらい執行力のある債務名義の正本を用意しなければいけません。
執行文の付与が必要な債務名義
- 判決正本(確定判決・仮執行宣言付判決)
- 公正証書正本
- 和解調書正本
- 民事調停調書正本
- 訴訟費用額確定処分正本
- 家事調停調書正本(家事事件手続法別表第二に揚げる事件を除く解決金や慰謝料などを請求するとき) など
執行文の付与が不要な債務名義
- 家事調停調書(養育費・婚姻費用等の扶養義務に基づくものや遺産分割,財産分与等を請求するとき)
- 仮執行宣言付支払督促正本
- 仮執行宣言付少額訴訟判決正本
- 家事審判書正本の場合、執行文は不要ですが確定証明書が必要になります。
※執行文…強制執行を行うことができる効力があることを公的に証明する文書のこと。債務名義の正本の末尾に付記した公証文言のことです。判決を出した裁判所の書記官や公正証書を作成した公正役場で付与してもらう。
債務名義の送達証明書
債務名義が債務者に送達されたことの証明書です。裁判所や公正役場など債務名義を作成したところで債務名義を発送してもらい送達証明書を発行してもらいます。
申立書(債権差押命令)
債務者が支払いを滞っているので差し押さえをしてください。といった内容の書類となっています。債権差押命令申立書が裁判所サイトよりダウンロードが可能となっています。債務者が離婚した相手であれば市区町村役場にて住民票を取るなど、ある程度自分で調べる事も可能です。債権差押命令申立書は裁判所サイトよりダウンロードが可能となっています。
当事者目緑
債権者(申立者)、債務者、第三債務者(差し押さえ先)の名称や住所などを記載するものとなっています。裁判所のサイトよりダウンロード可能です。
請求債権目録
債権者が債務者に対して持つ債権の一覧を記載するものですが、お持ちの債務名義の種類によって目録の記載が異なりますので、裁判所のサイトからお持ちの債務名義に合った請求債権目録をダウンロードして作成します。
差押債権目録
何を差押えするのかを記載するものです。差し押さえするものにより目録が異なるため、裁判所のサイトから差し押さえる財産に合った差押債権目録をダウンロードして作成します。
自分の戸籍謄本
離婚などにより債務名義に記載の氏名と現在の氏名が異なる場合もあるでしょう。そういった場合、記載された氏名と現在の氏名のつながりを明らかにするために戸籍謄本が必要となりますので市区町村役場で取得します。
自分の住民票
引っ越しなどにより債務名義に記載の住所と現在の住所が異なる場合、こちらもつながりを明らかにするために住民票が必要となりますので市区町村役場で取得します。
※第三債務者に対する陳述催告の申立書
陳述催告とは,第三債務者に対し差押債権の存否等について照会をする手続です。 必ず申立てが必要なわけではありませんが債権の存否等を知り手続の参考にしたい場合には申し立てましょう。
申立書提出後から取立てまでの流れ
申立書提出
多くの書類を用意したり作成するのは大変ですが、裁判所のサイトでは申立書や目録などの記載例も掲載されていますので参考にしながら作成することができます。申立ての書類がすべて完成したら債務者居住地の管轄裁判所の債権執行係に必要書類を提出し申立てをします。
申立ての際には書類のほかに所定の郵便切手や収入印紙が必要となっています。必要な郵便切手や収入印紙については細かく決まっていますので、裁判所のサイト内の予納郵便切手一覧表を確認したり申し立て時に直接執行係の方へ聞けば教えてくれるでしょう。
1.裁判所へ申立書を提出しましたら、書類に不備がないかどうか、不備があれば裁判所から補正の連絡が電話で入ります。補正の指示があった場合はその補正を終えたてから債権差押命令が発令となります。申立て後・補正後、通常債権差押命令の発令まで1~2開庁日かかります。
※預金口座の差押えをする場合は口座に預金の入っているタイミングを見計らい、口座の預金残高が多くなると考えられる日に合わせて差押えをするなどの工夫が必要であり、申立てのタイミングも重要となる。上申書を提出し日付指定で送達することも可能。
2.裁判所から第三債務者に債権差押命令が送達されます。(同一市内なら翌日に送達されます。)
3.第三債務者への送達後1週間ほど遅れて債務者へも債権差押命令が送達されます。
4.陳述催告の申立てをしている場合、第三債務者への送達から1~2週間程度で差押債権の有無等を記した陳述書が裁判所に提出されます。
5.陳述書提出の数日後、裁判所から債権者に債権差押命令(債権者に送達される分)・第三債務者作成の陳述書・裁判所作成の送達証明書が送られてくる。(送達証明書が送られてくるまで差押命令の日付から2週間程度の期間を要する)
取り立てをする
ここまで準備をして、いよいよ取り立てをするその時まで来ましたね!ここまでくれば養育費や慰謝料を回収するまでのゴールが一つ近づいてきた?
送達証明書に記載されている債務者への債権差押命令送達の日から1週間(ただし、給料などの差押えの場合で、養育費等の請求が含まれない場合は4週間)経過日以降、債権者は第3債務者と交渉し、差押が成功した部分の取立を行うことが可能となります。
この取立てについて裁判所は一切関与しませんので全て自分で行うこととなるので、相手のお給料であれば、その勤務先の担当者とやり取りを行いお給料を差し押さえる事になります。
第三債務者は通常債権者からの連絡を待ち債権の支払いをしますので連絡してその支払いの方法(振り込みや取りに行くなど)決めることになります。また、取立てに要する費用(振込手数料等)は債権者が負担することになります。
このように、一見して難しく感じることもその順序を整理しておいて着実に進めていけば費用をかけることなく自分自身で支払われない養育費や慰謝料を差し押さえすることは可能となるのです。
もちろん、簡単とはいっても、準備しなければならないものや調べなければならないことがあるので、2,3日で実施できるものではないでしょうけれど、辛抱強く準備していけば差し押さえをすることが出来るのですね。
これに成功すれば、養育費や慰謝料をしっかりと回収できるようになるのです。
準備段階で、調査のプロである探偵事務所に依頼をして当事者の財産について調べておくことも有効な手段の一つですが、事前に差し押さえに備えるために、離婚前の段階で口座関係や財産に所在についてしっかりと把握しておくことも有効な方法の一つではないでしょうか?
取下げ(強制執行の終了)
債務者から全額差し押さえた場合や、差押債権がなかった場合、差押を中止するために取り下げをします。
強制執行の申立時に提出した債務名義の正本や送達証明を返してもらうには、還付申請が必要ですのでこちらの申請も行いましょう。
債権執行にかかる費用
強制執行の種類によって費用は変わってきます。動産執行や不動産執行などでは予納金が必要で数万円~差し押さえる物によっては100万円を超える事もあります。
一方、債権執行の場合予納金は不要なため基本的に(債権者・債務者・第三債務者が各1名の場合)4000円の収入印紙代と数千円程度の郵便切手で強制執行ができます。執行文付与・住民票や戸籍謄本の取得・第三債務者の資格証明書を取得する費用も必要ですのでトータルで1万円程度かかりますが、弁護士などに依頼した場合に比べればかなり費用が抑えられるでしょう。また、強制執行にかかった費用は請求債権目録に執行費用として記載でき、債務者へ請求できるものも多くありますので資格証明証書や戸籍謄本など取得にかかった際の領収書は取っておきましょう。
まとめ
法的に支払の取り決めをしているのにもかかわらず守ってくれない。そんな相手に強制執行をするには、相手の持つ財産をハッキリ把握する事や様々な書類を取得作成する必要があります。
これらの事は確かに大変なことですが、自分でやることも可能なのです。
弁護士に依頼すればほぼすべての手続きをやってもらえますが、その分費用もかかってきます。また、強制執行はいつも成功するとは限りません。あると思っていた財産が無かったり思っていたより少なかった場合や債務者が強制執行に気が付き逃げてしまった場合には弁護士に依頼していたとしても費用倒れに終わってしまうといった事態もあり得ます。費用が高額になるからと強制執行に踏み切れなかった方や自分で強制執行はできないからと債務者からの回収を諦めていた方でも、手間と時間はかかりますが費用を抑えて自分で強制執行にチャレンジする事も検討してみる価値はあるでしょう。
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